日本の空の玄関口である東京国際空港(羽田空港)を建設、管理・運営する日本空港ビルデング株式会社では、2018年よりフードピクトを採用し、飲食テナントへの導入を積極的に推進しています。
訪日外国人の回復に伴い、2023年度には空港利用旅客数は8,000万人を超え、世界各地からのお客さまを出迎える”日本の顔”としての側面を持つ施設。公共性が高く、日々多様な利用者が行き交う空港において、空港運営会社とフードピクトを利用している飲食テナント2店舗にお話を伺いました。
― フードピクトを導入いただいたきっかけや、その後の状況をお教えいただけますか。
導入した決め手は、成田国際空港や関西国際空港、全国の飲食施設等にも多く採用されていたことです。また当時は2020年の東京オリンピックに向けて、多様な食制限のお客様をおもてなしするという機運が高まっていたこともあり、導入を決めました。
導入時にはフードピクト社が提供するテナント向けの研修や、導入にあたっての個別店舗サポートも活用し、館内飲食店への導入を推進しました。
弊社が店舗数に応じてライセンス料をお支払いする形で、各店舗には無償でご利用いただいています。新店舗オープン時に案内することと合わせて、月1回の店長会でも周知するなど、積極的に導入を推奨しています。
また、アレルギー表示に関する法律改正等に合わせて、フードピクトのデザインとマニュアルが随時アップデートされ提供されるので、そちらを随時テナント様へ情報共有しています。
― フードピクトを採用して感じられたメリットはありますか。
宗教による食の禁忌やアレルギー表示に関わる品目が抜け漏れなくカバーされているのがよいです。フリー素材等だとどうしても欠けているものもあったりするので、きちんと網羅されていて、なおかつ法律改正などに合わせてアップデートされるという安心感があるのは、空港という公共的な施設にとっては重要ですね。
また、お食事を摂られたあとに飛行機に乗るという場所の特性を考えると、アレルギー等による急病を発症するというリスクがあります。フードピクトのおかげでそういったリスクが未然に防げているのもありがたいです。
また、外国のお客様に対応しないといけない場面がどんどん増えている一方で、英語を使える人材は充分に足りているとは言えません。そのため、フードピクトというツールは既存のスタッフの助けにもなりますし、新規採用時にも心配が解消されるというメリットが生まれています。導入する前は外国人のお客様にうまく対応が出来ず、お客様が不安を感じて退店してしまうということもあったのですが、そういった機会損失の低減にもつながっていると思います。
― インバウンドを含めた最近の空港の利用状況や、今後の展望をお聞かせください。
国が訪日外国人客数を2030年に6,000万人にするという目標を掲げました(*1)が、現場でも外国のお客様の利用は増えてきていると感じます。国内線・国際線の両方が入っている第2ターミナルでも、以前より外国人のお客様が増えているという話も聞いています。
当空港でも、2020年に第2ターミナルに国際線対応施設を増築するなど、外国人のお客様がこれからもますます増えていくことが予想されるため、今年ヴィーガン対応の飲食店が2店舗オープンしました。インバウンドの増加に伴って、ヴィーガンといった食の多様性対応へのお客様からの要望も増えてきていますね。
近年はアレルギーに対する世間からの要望も高まっていると思いますし、やはり当社としては、お客様に食の選択肢を増やしていかないといけないな、と感じています。またどんなお客様がいらっしゃっても安心・安全な対応ができるように、これからもフードピクトの利用を推奨していきたいと思います。
今回の取材では、実際にフードピクトをご利用いただいている飲食テナントの方にもお話を伺いました。
店舗① カステルモーラ 様
メニュー作成時は手間をかけて。日々のオペレーションは軽減。
当店では出来る限り既製品を使わずに、季節ごとの食材を使ったお料理を提供しています。そのため、メニューの更新時には原材料を料理長が確認し、そこから私や他のスタッフが間違いのないようにダブル、トリプルチェックをするなど、念を入れてフードピクトの表示を確認しながらメニューを作成しています。正直手間はかかりますが、フードピクトがあることで、日々のオペレーションの効率化や人材不足に対応しやすくなっています。
というのも、飲食業界全体で人材不足が課題になっている中、学生のアルバイトを含めてすべてのスタッフが専門的な知識を持つのは難しいですよね。フードピクトのついたメニューを見れば気を付ける原材料が分かるようになっています。営業中の手間を考え合わせると、フードピクトがあった方が、お客様にとっても従業員にとってもメリットになると感じています。
フードピクトを付けるとメニューをアレンジしづらくなるという側面もあるのですが、ベースのレシピを守りながら、フードピクト表示に影響のないように、例えば付け合わせのお野菜を変えることで日々のアレンジも行っています。何よりアレルギーに関する表示は人の命に関わることなので、そのメリットには代えられないですね。
お客様とのコミュニケーションで言うと、メニューに表示しているフードピクトを見て、ある程度食べられるかを判断してから、注文時に念のために「〇〇アレルギーなので外してね」と補足的におっしゃる方が多いように思います。それだけ世間にピクトグラムが広まっているのではないでしょうか。導入前に比べて、注文前からスタッフに原材料について相談する人は減ったような体感はあります。
店舗② 讃岐うどん般若林 様
スピード重視の接客中、従業員がひと目で原材料を把握できる。
当店はセルフのうどん店です。空港という立地の中で、限られた時間の中で急いで食事をされる方も多い印象です。来店人数も月1万人をゆうに超えるので、効率的なコミュニケーションを意識し、スピード感を重視してオペレーションを回しています。インバウンドの方も増加傾向にあり、おおよその体感としては3~4割が外国のお客様かと思います。英語が得意でないスタッフもいるので、「食器をどこに返却するか」や「うどんに汁が入っているか、いないか」といったやり取りが難しい場面もあります。
そんな環境の中で、フードピクトの表示は従業員教育に有効だと感じています。フードピクトがあることで従業員がメニューごとに使われている原材料をひと目で把握して質問に答えられる、という効果が大きいですね。アレルギー食材の一覧表などもあると思うのですが、文字数も情報量も多いので、覚えるのも難しいし、都度見ないといけないのも大変です。フードピクト付きのメニューがあれば、間違いも少なく、暗記するための教育も不要なので、従業員教育という面ですごく助かっています。
今回、多様な利用者が集まる国際空港の最前線で日々奮闘されている皆さまにお話を伺いました。国のインバウンド施策も後押しとなり、ますます食の多様性への対応が必要となる中、フードピクトのメリットだけでなく、今後に向けての要望や、さらに導入店舗を増やすにあたっての課題もお聞かせいただきました。
株式会社フードピクトでは、商業施設や飲食店のみなさまにフードピクトを有効活用していただけるよう、導入時・導入後の研修や法律改正に合わせたアップデート等を提供しています。そうしたアフターフォローを通じて店舗の皆さまとのコミュニケーション・ヒアリングを行い、さらなるサービスの拡充・改善に努めていきたいと考えています。
取材にご協力いただいた皆さま、ありがとうございました。
取材日:2024年8月
インタビュアー:(株)フードピクト 菊池 信孝
編集:臼井 綾香
撮影:横山 宗助
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