前回の記事では、世界の食トレンドと求められる3つの視点を紹介しました。
今回の記事では多様化する食へのニーズについて、日本と海外を比較しながら紹介します。
2013年にユネスコの無形文化遺産に「和食」が登録されたのをきっかけに、日本の食や食事体験への注目が集まっています。
実際に訪日外国人を対象とした調査では、訪日前・滞在中・次回の訪日時のいずれにおいても、日本での食事体験が旅の目的の1位となっています(観光庁「訪日外国人の消費動向」平成29年次報告書)。
一方、実際に来日した外国人が滞在中に困った場所は「飲食店」が1位となっており、世界から日本への食の期待とその受け入れ環境には大きなギャップが見られます(国土交通省「訪日外国人旅行者の受入環境整備における国内の多言語対応に関するアンケート」2017年結果)。
その原因のひとつに、世界規模で食へのニーズが多様化していることが挙げられます。
現在、世界の約3人に1人には、食物アレルギーや病気、ヴィーガンやベジタリアン、宗教上の禁忌により「食べられないもの」があります。
食に制約がある人たちが安心して食事を楽しむためには、料理や食品に含まれる食材を正確に把握する必要がありますが、言葉や文化の違いだけではなく、食の多様性への理解が進んでいない日本では、安心で快適な食体験へのハードルがまだまだ高いのが現状です。
海外では食の多様性に対応するため、わかりやすいマークを使いながら、企業と消費者のコミュニケーションが進んでいます。
動物性の食材を使用していないことを示すヴィーガンマークやベジタリアンマーク、ユダヤ教の食戒律に従って豚や甲殻類などを使用していないことを示すコーシャマーク、イスラム教の食戒律に従って豚やアルコールなどを使用していないことを示すハラールマークなどがあります。
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さまざまな宗教や信条のお客様がいることを前提として、飲食店の店頭やメニューブック、食品パッケージの前面にこれらのマークが表示され、消費者が一目で判断できるような取り組みが進んでいます。
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諸外国に比べると多言語による情報提供や、多様化する食へのニーズに配慮した情報やサービスの提供が遅れている日本では、今後どのように対応するのが良いのでしょうか? 次回は日本における対応方法について紹介します。
< 次回記事に続く >
フードピクトでは、全国の宿泊施設や飲食店を対象にした講演や研修、自治体や観光協会を対象にしたファムトリップの参加やコンサルティングを提供をしています。ご相談・ご依頼は「お問合せ」より気軽にお寄せください。
(本記事は「月刊クリンネス」2022年3月号の巻頭特集に寄稿した内容をもとに、寄稿では割愛した事例を追加して再構成しています)
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