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[事例5]フードテックを活用してパーパス消費を取り込む|URBAN REMEDYのブランディング


 世界の食トレンドと消費者が食に求める3つの役割記事はこちらで紹介した通り、食事が栄養補給から自己実現への手段へと変化するなか、消費者が食に求める役割は、主体的な選択、コミュニティへの帰属、パーパスの発見の3つに分けることができます。


 このうち「パーパスの発見」をしたい消費者のニーズを満たしてくれる食品物販の事例には、どのようなものがあるでしょうか? 本記事ではアメリカのオーガニック&プラントベースの食品会社である URBAN REMEDY の取り組みを紹介します。



 

URBAN REMEDYとは

 

 URBAN REMEDYは、2009年に漢方医で鍼灸師の資格を持つネカ・パスクワレによって設立された「Food is Healing」(食は癒し)という信念を体現する米国のオーガニック&プラントベースの食品会社です。

 

 古くから伝わる薬草の原理と現代の食のテクノロジーを融合し、すぐに食べられるサラダやスナック、コールドプレスジュースなどに特化した商品を展開しています。

 

 すべての商品でオーガニック認証と非遺伝子組み換え認証を取得し、グルテンフリーで低糖質の食品を提供しています。

 

 栄養価が高くカラダによい食品であると同時においしさを重視し、人々が健康的で環境負荷が低い食品にアクセスできるように事業を展開しています。

 

 2021年には1,800万ドル(約23億円)の資金調達を実施し、全米での事業展開を目指して成長を続けています。


ホールフーズに設置されている URBAN REMEDY の冷蔵庫、ヴィーガン、サステナビリティ、オーガニック、プラントベース、フードテック
ホールフーズに設置されている URBAN REMEDY の冷蔵庫 (引用:URBAN REMEDY の Facebook(https://www. facebook.com/UrbanRemedyUSA/)


フードテックの活用と

パーパスを全面に出したブランディング

 

 サラダのような賞味期限が短い食品を、消費者が手に取りやすい価格帯で全米に流通させることは容易ではありません。

 

 URBAN REMEDY はフードテックを活用してリアルタイムの在庫管理・需要予測・原価計算を実現し、ホールフーズマーケットなどでの小売と、自社サイトでのD2C(Direct to Consumer:ECサイトによる消費者への直接販売)、卸売の3つの販売形態で事業を成長させています。


商品ごとに特徴的な野菜がイラストで描かれて選びやすいパッケージデザイン、ヴィーガン、サステナビリティ、オーガニック、プラントベース、フードテック
商品ごとに特徴的な野菜がイラストで描かれて選びやすいパッケージデザイン|筆者撮影(2022年9月)

 

 またストーリーテリングとクチコミを重視しており、2014年からCEOに就任したポール・コレッタは「私たちは食は癒しという考えを軸にストーリーを展開しています。試しに使ってみて、気に入ってもらえたら友人や家族に伝えて、また使ってもらう。それを繰り返すことで、私たちはビジネスを成長させてきました」と雑誌の取材で答えています。

 

 実際にホールフーズマーケットの売り場に行くと、商品陳列棚の端にある売り場の目立つ場所(エンド)にURBAN REMEDY ブランドの冷蔵庫が置かれていました。また商品パッケージにはオーガニック認証や非遺伝子組み換え認証のほかにも、「EAT WITH PORPOSE」や「FOOD IS HEALING」などの力強いメッセージが添えられ、他のサラダ系商品とは一線を画す存在感を放っていました。

 

紙の包装を外すと「FOOD IS HEALING」と書かれたテープが目に入ります、ヴィーガン、サステナビリティ、オーガニック、プラントベース、フードテック
紙の包装を外すと「FOOD IS HEALING」と書かれたテープが目に入ります|筆者撮影(2022年9月)


包装の側面にはクリーンフードを象徴する表示や認証が並びます、ヴィーガン、サステナビリティ、オーガニック、プラントベース、フードテック
包装の側面にはクリーンフードを象徴する表示や認証が並びます|筆者撮影(2022年9月)

 


原材料表示を見ると、水と塩以外の原材料はすべて有機認証を取得していることが分かります、ヴィーガン、サステナビリティ、オーガニック、プラントベース、フードテック
水と塩以外の原材料はすべて有機認証を取得していることが分かります|筆者撮影(2022年9月)


 価格はサラダが1箱10ドル前後(約1,400円)、コールドプレスジュースが1本9ドル前後(約1,200円)と、ホールフーズで販売されている他のサラダやコールドプレスジュースよりも最大で1.5倍ほど割高です。 


 商品を食べてみると、野菜自体は米国らしい繊維質で大味な印象を受けましたが、ほどよいボリュームとしっかり濃いめのドレッシングが全体をまとめ、野菜をもりもりと食べられる満足感とギルティーフリーな心地よい食後感が続きました。

 

 また URBAN REMEDY が支持される理由のひとつに、パーパス消費を取り込む力強いコミュニケーションだけではなく、商品のアップサイクルにも具体的に取り組んでいることが挙げられます。

 

 例えばコールドプレスジュースの製造時に廃棄物として出る果肉や皮は「アップビート・ヴィーガン・チーズバーガー・ラップ」や「キャロット・カレー・クラッカー」の原材料として再利用され、おいしい食品を食べたいけれど地球環境への加害者にはなりたくないという消費者ニーズを取り込んでいます。


 現在日本から URBAN REMEDY のウェブサイトにアクセスすることはできません。また日本語で出ている情報も少ないため、新しい情報は筆者の note「食の未来|トレンド&インサイト」で随時アップデートしていきます。



 

 株式会社フードピクトでは、ガストロノミーツーリズムやインバウンド対応に取り組んでいる観光・宿泊・飲食事業者に向けて、より良い食体験を届けるための事例集を毎年刊行しています。


 最新刊の事例集「Inclusive & Regenerative Gastronomy」は、2024年9月に書籍とPDFで販売予定です。書籍は資源保護のため初版100冊のみとなりますので、お早めにご予約・ご購入ください。なお2023年度の事例集「Expolore the Future of Food」は、引き続きPDF版をご利用いただけます(書籍は完売御礼)。



 また本事例集に関する講演や寄稿のご依頼にも対応しています。講演内容の詳細やこれまでの実績は下記よりご覧いただけます。


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