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[事例9]プラントベースの商品開発と体験設計をサポートする Plant Journey


 世界の食トレンドと消費者が食に求める3つの役割に続いては、多様化する消費者ニーズに応えて世界に通用する食体験を提供するための3つのステップ「主体的な選択のための情報提供、コンテクストとしての食体験の提供、持続可能な食に向けた取り組みの実践」を紹介します。


 多様化する消費者ニーズに応えるステップの二つ目は、コンテクストとしての食体験の提供」です。これは第一部で紹介した消費者が食に求める役割の「コミュニティへの帰属」ニーズに応える取り組みです。


 コンテクストとしての食体験の提供を実施している食品メーカーの事例にはどのようなものがあるでしょうか? 本記事では弊社のプラントベース(植物由来食品)による商品開発と体験設計の事業を紹介します。



 

プラントベース事業 Plant Journeyとは

 

 Plant Journey は自治体や食品企業を対象に、プラントベースの手法を用いた美味しくて環境負荷が低い商品開発のサポートと、消費者が生産者や料理人と交流しながら商品に込められた思いや社会的意義を理解できる体験型プログラムの企画運営を提供しています。

 

 全国100社1,600店を超えるホテルや飲食店を対象に、多様な食習慣や嗜好があるお客様のおもてなしをサポートする株式会社フードピクトの新規事業として2020年にスタートしました。

 

 地域にある魅力的な野菜の発掘と再評価、規格外野菜や食品残渣を活用した持続可能な食のサイクルづくりが評価され、国連プロジェクトサービス機関(UNOPS)・兵庫県・神戸市が主催するグローバルな課題解決のための共創プログラム「SDGs CHALLENGE」に採択されています。



 


コンテクストとしての食体験を実現する

商品開発と体験設計

 

 コンテクストとしての食体験を実現するため、Plant Journey では自治体や食品企業を対象に、プラントベースの手法を用いた野菜が主役の商品開発のサポートと、商品の世界観を体験できるプログラムの企画運営を提供しています。

 

 2021年には兵庫県の「ポストコロナ社会の具体化に向けた調査検討事業」として、同県を舞台にプラントベースの手法を用いた野菜が主役の商品開発に着手。

 

 兵庫県の五つの地域の特色ある野菜を使用した「ひょうご五国のごちそう」シリーズを開発し、D2C(Direct to Consumer:ECサイトによる消費者への直接販売)の初回販売で合計1,000食を消費者に届けました。


ひょうご五国のごちそうシリーズから、丹波の黒豆とコク旨きのこ三重奏、サステナビリティ、地産地消、ガストロノミー、プラントベース、顧客体験、Farm to Table
ひょうご五国のごちそうシリーズから、丹波の黒豆とコク旨きのこ三重奏
焼きナス、きのこ、黒オリーブのペースト、サステナビリティ、地産地消、ガストロノミー、プラントベース、顧客体験、Farm to Table
ひょうご五国のごちそうシリーズから、焼きナス、きのこ、黒オリーブのペースト
ひょうご五国のごちそうシリーズから、未体験やさいソース、サステナビリティ、地産地消、ガストロノミー、プラントベース、顧客体験、Farm to Table
ひょうご五国のごちそうシリーズから、未体験やさいソース

 Plant Journey が提供する商品開発は、肉や魚、卵や乳製品を使用しないプラントベースの手法に加えて、蜂蜜やお酒も使用しないため、ヴィーガンやベジタリアン、ハラールやコーシャなどの宗教による食禁忌、卵や乳のアレルギーがある消費者にも安心してお召し上がりいただけます。

 

 また畜肉を使用した同様の商品に比べて、原材料の生産にかかる温室効果ガス排出量と使用する水の量を大幅に削減することができ、環境負荷が低い商品となっています(日本総合研究所に依頼したインパクト評価レポートより)。

 

 2022年には観光庁の「地域独自の観光資源を活用した地域の稼げる看板商品の創出事業」として、ひょうご五国のごちそうシリーズの舞台となった兵庫県を舞台に、消費者が生産者や料理人と交流しながら商品の世界観を理解できる体験プログラムを造成し、コンテクストとしての食体験を提供しました。




コンテクストとしての食体験

 

 体験プログラムでは、耕作放棄地を開墾してオーガニックで野菜を育てている生産者の畑を訪問。商品のベースとなる野菜が育てられている現場で、生産者から野菜づくりや農を通して実現したい想いを直接聞き、その後の料理体験で使用する野菜を収穫しました。

 

畑での収穫体験プログラム、サステナビリティ、地産地消、ガストロノミー、プラントベース、顧客体験、Farm to Table
畑での収穫体験プログラム(2022年11月に筆者撮影)

 続いては家庭でもできる野菜が主役の料理体験です。


 プロの料理人からおいしい野菜の見分け方や下処理の方法、野菜の旨みを引き出す調理法や味付けのコツを教わり、さきほど畑で収穫した蕪を使ったスープと春菊を使ったパスタソースをつくりました。商品のおいしさの背景にある丁寧な調理や技術に触れられる時間となりました。

 

キッチンでの調理体験プログラム、サステナビリティ、地産地消、ガストロノミー、プラントベース、顧客体験、Farm to Table
キッチンでの調理体験プログラム(2022年11月に筆者撮影)

 プログラムの最後には、商品開発に携わった料理人のレストランで、肉や魚と同じように野菜が主役として登場するこの日だけの特別なコース料理を体験。食事の後には参加者が料理人や生産者との対話を通してプログラムに込められた思いを知り、その世界観に浸りました。

 

 一般的な食の体験プログラムの多くは、収穫体験・料理教室・喫食体験などが独立したコンテンツとして提供されています。一方で Plant Journey は、野菜が育てられるところから、商品が生まれて、消費者に届くまでのプロセスをひとつの物語として体験できるようにプログラムを設計し、参加者が商品のコンテクストを理解できるように工夫しています。



 

 株式会社フードピクトでは、ガストロノミーツーリズムやインバウンド対応に取り組んでいる観光・宿泊・飲食事業者に向けて、より良い食体験を届けるための事例集を毎年刊行しています。


 最新刊の事例集「Inclusive & Regenerative Gastronomy」は、2024年9月に書籍とPDFで販売予定です。書籍は資源保護のため初版100冊のみとなりますので、お早めにご予約・ご購入ください。なお2023年度の事例集「Expolore the Future of Food」は、引き続きPDF版をご利用いただけます(書籍は完売御礼)。



 また本事例集に関する講演や寄稿のご依頼にも対応しています。講演内容の詳細やこれまでの実績は下記よりご覧いただけます。


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